RECORD NO.005 · 前近代の世界
ペスト医師
Plague doctor
◆絶滅〜18c欧⑥ 医学・科学の更新
要約
黒死病の流行都市に雇われた専門医。くちばし型のマスクに香草を詰めた異様な姿は、「悪い空気が病気を運ぶ」という誤った理論の産物だった。
しごとの中身
都市と契約し、ペスト患者だけを診て回る。当時の医学は病気の原因を「瘴気(悪い空気)」と考えたため、くちばしマスクにハーブや香料を詰め、蝋引きの長いコートで全身を覆った。患者に直接触れないよう、診察は長い棒で行った。
治療法はないに等しく、実際の仕事の多くは死者数の記録と遺言の立ち会い。死の統計係でもあった。
道具
くちばしマスクと香草蝋引きコート診察棒死亡記録簿
きえたわけ
17c—くちばし装束が定着するが、ペスト自体は防げない
18c—大流行が下火になり、契約医の需要が減る
19c—細菌の発見で瘴気説が倒れ、装束ごと過去のものに
理論がまちがっていても、防護服という発想だけは正しかった。現代の感染症医の防護具は、このくちばしの遠い子孫である。
豆ちしき
くちばしマスクは17世紀のフランス王室医シャルル・ド・ロルムの考案と伝わる。※恐怖の象徴として残ったこの姿は、いまやハロウィンとベネチアのカーニバルの人気衣装になっている。
この仕事の系譜



