RECORD NO.019 · 産業革命の世界
ヒル採集人
ひるさいしゅうにん / Leech collector
◆絶滅〜19c末英⑥ 医学・科学の更新
要約
血を吸わせて病気を治す「瀉血」がふつうの医療だった時代、その主役のヒルを沼で集める仕事があった。餌は、自分の足だった。
しごとの中身
スカートをたくし上げ、素足で沼に入り、じっと立つ。やがてヒルが吸いついてくるので、頃合いを見てはがし、壺に集める。古い馬の脚を使う者もいたが、いちばん確実な餌は自分の足だった。一日じゅう血を吸われるので、採集人はいつも貧血気味だったという。
集めたヒルは薬屋や医者に売る。19世紀前半のヨーロッパは空前のヒルブームで、フランスは年に数千万匹を輸入した。頭痛にも熱にも、なんにでもヒルが処方された時代だった。
道具
自分の足ヒル壺木の棒包帯
きえたわけ
19c半ば—乱獲でヒルが激減し、値段が高騰する
19c後半—近代医学が瀉血の効果を否定しはじめる
19c末—需要が消え、職業ごと沼に沈む
「悪い血を抜けば治る」という理論そのものがまちがっていた。よりどころの学説が倒れると、その上に建っていた職業も一緒に倒れる。
豆ちしき
ヒルは医療の世界にひっそり帰ってきている。切断した指の接合手術などでうっ血を防ぐため、医療用ヒルは2004年にアメリカFDAが「医療機器」として正式に承認した。
この仕事の系譜



