RECORD NO.006 · 前近代の世界
理髪外科医
Barber-surgeon
◆絶滅〜18c欧⑥ 医学・科学の更新⑤ 制度・法律
要約
散髪も、抜歯も、瀉血も、切開手術も、ぜんぶ同じ店の同じ人がやっていた。刃物を扱う仕事は、まとめてひとつの職業だった。
しごとの中身
中世ヨーロッパでは、学問としての医学を修めた内科医は手を汚す処置を嫌った。そこで刃物の扱いに長けた理髪師が、瀉血・抜歯・膿の切開・戦場での手足の切断まで引き受けた。店先には血の付いた包帯を干し、それがそのまま看板になった。
床屋で歯を抜く——いまの感覚では乱暴だが、当時は「刃物のプロに頼む」という筋の通った分業だった。
道具
剃刀瀉血用のメスと椀抜歯鉗子包帯
きえたわけ
18c—外科学が学問として確立しはじめる
1745—英国で外科医組合が理髪師組合から分離する※
以後—「切る医療」は外科医へ、「切る身だしなみ」は理容師へ
ひとつの職業が、医師と理容師というまったく別の二職業に細胞分裂した珍しい消滅。どちらの子孫も現役である。
豆ちしき
理髪店のサインポールの赤・白は、瀉血の血と包帯に由来するといわれる。世界中の床屋の前で回りつづけるあの縞模様は、消えた職業の看板がそのまま残ったものだ。
この仕事の系譜



