RECORD NO.008 · 前近代の世界
罪食い人
Sin-eater
◆絶滅〜20c英ウェールズ地方⑥ 医学・科学の更新
要約
死者の胸の上に置かれたパンを食べ、その人の罪ごと引き受ける。イギリスの田舎に実在した、魂の下請け業である。
しごとの中身
村で人が死ぬと呼ばれ、遺体の上に置かれたパンとビールを、遺族の見守るなかで飲み食いする。それによって死者の生前の罪が自分に移り、死者は身軽にあの世へ行ける——という信仰の代行業だった。報酬はわずかな金銭。
罪を溜めこんだ存在として村人からは忌み嫌われ、共同体の外れに住むことが多かった。必要とされ、同時に避けられる仕事だった。
道具
パンビール引き受けた罪の総量村外れの住まい
きえたわけ
19c—教会がこの風習を異端的として圧力を強める
19c末—近代化で農村の民間信仰そのものが薄れる
1906—最後の罪食い人とされる人物が死去する※
宗教観の更新によって、需要そのものが蒸発した。仕事の存在理由が「信じられていること」だけだった職業の、静かな終わり方である。
豆ちしき
「最後の罪食い人」リチャード・マンズローの墓はいまも英シュロップシャーに現存し、地元の人々の手で修復された。彼は本業が農夫で、罪食いは村への奉仕として引き受けていたと伝わる。※
この仕事の系譜
罪食い人 → ─



