RECORD NO.050 · 20世紀の世界
シラミ飼育係
Louse-feeder
◆絶滅〜40sポーランド⑥ 医学・科学の更新
要約
発疹チフスのワクチンをつくるため、自分の血でシラミを育てた研究職。占領下のポーランドでは、知識人の命を守る隠れ蓑にもなった。
しごとの中身
発疹チフスの病原体を培養するには、媒介役のシラミを大量に飼う必要があった。飼育係は小さな籠に入れたシラミを毎日太ももに縛りつけ、自分の血を吸わせて育てる。かゆみと感染の危険に耐える、文字どおり身を削る仕事だった。
道具
シラミの飼育籠自分の血太ももに巻く帯感染への覚悟
きえたわけ
1920〜40s—チフスワクチン研究の要として飼育係が必要とされる
第二次大戦後—ワクチン製造が工業化・無菌化される
以後—人体を使う飼育は不要になる
医療技術の進歩が、もっとも過酷な人体依存の仕事を消した。技術の更新が労働者を苦役から解放した、数少ない例である。
豆ちしき
ナチス占領下ポーランドのヴァイグル研究所では、この「飼育係」の身分が強制労働や移送からの保護になった。学者や抵抗運動家がシラミに血を吸わせることで生きのびた。※命を削る仕事が、命を守った。
この仕事の系譜
シラミ飼育係 → チフスワクチンの工業生産



