RECORD NO.003 · 前近代の世界
写本彩飾師
Illuminator / Limner
◆絶滅〜15c末欧⑦ メディア・娯楽の交代
要約
印刷機が生まれる前、本は一冊ずつ手で書き写された。その余白と頭文字を、金箔と極彩色で飾りあげたのがこの職人である。
しごとの中身
修道院の写字室や都市の工房で、羊皮紙のページに顔料と金箔で装飾をほどこす。章の頭文字を植物や動物のかたちに描き、余白には天使や怪物、ときにふざけた落書きめいた絵まで。一冊仕上げるのに数ヶ月から数年かかった。
本が財産だった時代、彩飾は「この本にはそれだけの価値がある」という宣言でもあった。
道具
金箔鉱物・植物顔料羊皮紙細筆
きえたわけ
1450s—グーテンベルクの活版印刷が本の大量複製をはじめる
15c末—手写本の注文が激減し、工房がたたまれていく
以後—装飾の技は挿絵版画へ、精神は装丁デザインへ
「一冊ずつ手で作る」ことが本の前提でなくなった瞬間、その一冊を飾る仕事も前提を失った。機械複製に敗れた最初のクリエイターである。
豆ちしき
現存する中世写本には、ページの上を歩いた猫の足跡や、インクをこぼした写字生の言い訳の走り書きがそのまま残っているものがある。手作業の時代のバグは、消せずに数百年保存された。
この仕事の系譜



